パチンコ一匹狼

第3章【伝説】第1話

4月。出会いと別れのシーズン。俺は世間の喧噪から離れ、一人部屋で金を数えていた。 それは季節外れの雪が関東一帯に降った夜。窓から外を見渡せば、舞い散る桜の花びらと雪が重なり、なんとも幻想的な光景だったことだろう。数年前の俺なら、窓辺に椅子を…

第2章【再生】第4話

フー!アフー!なんてビートを刻んでいたら、目の前の液晶にはリツコではなくシンジが。 んふー、なんて固唾を飲んだら「逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ」んふー。この時点で投資額は19000円。さすがに擬似連は当たるだろ。この当たりが4連すれ…

第2章【再生】第3話

置いてきてしまったものは置いてきてしまったで仕方ない。今から家に取りに帰るわけにもいかない。 今は目の前のこのパチンコ台に全神経を集中させなくてはならない。しかしなんの演出も起こらない。リツコが「状況は?」と言うか、リツコを飛ばしても、ミサ…

第2章【再生】第2話

もう設置されて、1ヶ月以上経つのだろうが、この新しいエヴァを打つのは初めてだ。とは言っても雑誌で読んだからある程度は分かる。真新しい要素といえば、時短中に確変が潜伏していることがあることと、擬似連の種類が増えたことくらいか。要は今までと大し…

第2章【再生】第1話

この街にまた来ることになろうとは。どうも感傷的になってしまう。俺もそれなりに年を取ったということか。太陽は容赦なく俺の体を焦がす。上等だ。俺の体温は上がり続ける。 あのとき手を引こうかと真剣に考えた。そして実際に一度は手を引いた。いいじゃな…

逃亡

1万円が俺の財布の中からあっさりと消えていった。 回転数を見ると132回転だった。打ち始めのときの回らなさっぷりからすれば、ずいぶん回したんではないか。 しかし、しかしリーチにならない。 132回転。リーチ回数は2回。うち1回はなんの発展もせずにド…

回転

周りの奴らは、開店の合図とともに競走馬のようにいっせいにハンドルにしがみつく。俺はそんな真似しない。まずは一服。この開店と同時にタバコを燻らせるのが大事だ。 まず落ち着いて周りを見渡すことができる。あのばばあは今日負けたら首を括るんじゃない…

第2話「的」

前を走る女は階段を駆け上がっていった。駆け上がってまで2階に行きたい理由…それは一昨日導入された「CR STARWARSダース・ベイダー降臨」をやる以外にないだろう。 これはほんとに隣に座れるかもしれない。空いてる電車内でいい女の隣に座ったら…

第1話「女」

雨は好きじゃない。特に冬の雨は。 シトシトと降り、徐々に体温を奪っていく。死神のような雨。 だが、どれだけ寒さに凍えてもここを離れる訳にはいかない。優先入場整理券という片道切符を得るために。その切符は天国行きか、はたまた…… 「おれはもう勝負で…