第2章【再生】第4話


フー!アフー!なんてビートを刻んでいたら、目の前の液晶にはリツコではなくシンジが。
んふー、なんて固唾を飲んだら「逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ」んふー。

この時点で投資額は19000円。さすがに擬似連は当たるだろ。この当たりが4連すれば、欲を出しすぎない限り負けはない。血が沸騰した。

発展先はアスカ。アフー!ア、ア、ア、ア、アフー!ただし3と4のダブル。4くさいな。
なんて思ってたらサクッと3で使途殲滅。

残酷な天使のテーゼにあわせてフーフー言っていたら隣りの女と目が合った。女はその瞳と唇を妖艶に光らせて俺のことを見ている。おまえは本当にセクシーだぜ。ンーッベイッベ!




頬を刺す串の痛みで我に帰った。コンビニの裏のゴミ置き場を漁り、唐揚げが一つだけ残った唐揚げ棒にむしゃぶりついたときに串ごといったもんだから、串が頬に刺さってしまった。

なぜ俺はこんなとこにいるのか。さっきまで確変を引いてフーフーしてたはずなのに、なぜコンビニでゴミ漁りに精を出しているのか。

断片的な記憶。「打つかい?」と言う俺。断片的な記憶。女の座っていた台に1000円札を突っ込んでいる俺。
この記憶の俺は本当に俺なのか。冗談だろ、なんで確変の台を譲って、金を突っ込んで他の台をやってるんだ?

失われた部分が多すぎる。

「記憶を返せ!」

空に叫んだ。
頭に何かが引っかかっている。もう少しで何かが出てきそうだ。

「記憶だけは返してもらう!」

もう少しだ。手を伸ばせば届く距離。そこにこの顛末の答となるなにかがある。

「来い!」

ポロリと出てきたのは土下座している俺。誰に?女だ。隣に座っていた女だ。
土下座?この俺が土下座だと?
人に頭を下げられるのであれば、こんな生活はしていない。

この記憶はおかしい。俺じゃない。だが記憶の中に映る男は確かに俺だ。

もしもこの記憶が改竄された記憶であるとしたら?誰に?あの女に!

「ありえないわ!」

確かにありえない。だがそれ以外にありえない。

空には月。地には俺。俺はあの女を取り合えず探してみようと思う。
「また一人か…」
一人ごちても月はただ白く、月以外にそこにあるのは、黒。