2010-01-01から1年間の記事一覧

アクイ6

誰もいない教室を見渡して、一人ため息。 まったくどうかしている。 俺を除いた全員が幹男の家に向かった。幹男の家に行くことを頑なに断わる俺を、害虫でも見るような目をしてクラスメートは教室から出ていった。まったくどうかしている。 それでも幹男のあ…

アクイ5

学校へ着くと、なにやら教室がガヤガヤしていた。この時間だとまだ登校しているのはクラスの三分の二程度だが、みんなが一致団結してガヤガヤしてる。こういったことはたまにある。転入生が来るとか、誰かが死んだとかそういうときに。でもまだ転入生は来た…

アクイ4

「あれだろ。他人に害を与えるようなことだろ。そんぐらい知ってるっつーの」そう言うと、二木男はそうだよな、と呟き、また黙ってしまった。もうこれは「悪意」じゃない。間違いなく【アクイ】のことを言っている。たぶん。どうしたもんか。暫し逡巡。でも…

アクイ3

翌日も幹男は登校してこなかった。顔を合わせたくなかったから好都合だったが、机の中に溜まっていくプリントが気になる。おねだり当番はあと二日。どうか今日と明日はプリントが少ないようにと祈った。 放課後、担任に幹男の状態を聞かれ、元気そうでしたよ…

アクイ2

気持ち程度にノックしてドアを開けた。幹男の部屋はひどかった。窓に隙間なく貼られた黒い紙、テーブルの上のゲームに出てきそうなランプ、よくわからない髑髏の置物等々。外からの陽光は完全に遮断されていて、明かりはテーブルの上のランプだけだから、昼…

アクイ1

「なあ、お前【アクイ】って見たことあるか?」 うちの中学は最近【アクイ】の話題でもちきりだ。こないだ入学したばかりの一年も廊下で【アクイ】の話をしていた。どうせ嘘だろうが、「昨日【アクイ】を見た!」なんて得意気に喋ってるチビがいた。これだけ…

第3章【伝説】第1話

4月。出会いと別れのシーズン。俺は世間の喧噪から離れ、一人部屋で金を数えていた。 それは季節外れの雪が関東一帯に降った夜。窓から外を見渡せば、舞い散る桜の花びらと雪が重なり、なんとも幻想的な光景だったことだろう。数年前の俺なら、窓辺に椅子を…

アリアケ

そうさ僕らはスーパーボーイ、we are cool!なんて俺たち、どうだい?いけてるだろ? 時は西暦2012年。最近はロシアがEUに加盟したなんてテレビでは騒がれてるけど、俺たちの興味はそこにはないよな。俺たちの興味は最近よくテレビでも見かけるようになって…