アリアケ

そうさ僕らはスーパーボーイ、we are cool!なんて俺たち、どうだい?いけてるだろ?


時は西暦2012年。最近はロシアがEUに加盟したなんてテレビでは騒がれてるけど、俺たちの興味はそこにはないよな。

俺たちの興味は最近よくテレビでも見かけるようになってきたベトナムの五人組女アイドルユニット「アリアケ」。あの素朴な感じがほんといい。な?


歌番組で「日本に来て一番良かったと思うことはなんですか?」なんてアナウンサーに聞かれて「日本の人達みんな親切、かこいい」なんて言うんだぜ。もうね、さ、い、こ、う。

こないだもコンサート行ってきたよさいたまスーパーアリーナまで。な?

初めて生で見たけど、やっぱかわいかったよなー。いや、そりゃ日本のアイドルの方がかわいい娘はいるんだけどさ、やっぱりなんかじゅ、純な感じ?歌もすげーうまいし。うまいよな?透明感のある声で。な?

あ、あとドペちゃんのラップがすげーよかった。な?あの娘達まだ来日して一年経ってないのに日本語でラップ歌うんだぜ。な?まじあのラップには痺れたね、俺は。おいおいお前さっきから他人事みたいに聞いてるけど、俺見ちゃったんだよねー、お前が最前列のパイプのとこで、ドペちゃん団扇振りかざして踊ってるとこ。はははははー!大声で笑う俺たち、どう?


ただ去年の紅白のリハのときに「アリアケ」が険悪なムードになってたらしくて、スポニチに「アリアケ解散!」なんて記事にされてたけど、あんなの嘘だよな?な?

だってペンちゃんとドペちゃんはすげー仲いいんだよな。ブログでよく一緒にいるときの写真のせてるしな?な?
あと、ジュシームちゃんとグエンちゃんとデ・グェンちゃんも仲いいんだろ?な?前にそう言ってたよな?




あ、そういえばさー。うちの会社に斉木ちゃんっているじゃん?ほら前言ったじゃん。一緒にボーリング言ったって。え?覚えてないの?前言ったじゃーん!まあいいや。斉木ちゃんがさ、ふふふ、先週の土曜にホームセンターいったらしいのね。超面白くね!?うけるんだけど!
え?それでって?なにが?ああ、まあホームセンター行ったんだからなんか買いに行ったんだろうな。

全然不機嫌になんてなってないって。ほんと、ほんと全然怒ってなんていないって。いや、ほんとマシで気にしないで。ううん、ううん。ほんといいの、うん、ほんといいから、大丈夫大丈夫。



え?この服?そうそう!「JanJan」でえびぞり君が着てたやつ、だけどよく分かったよなー。まあそういうお前もそれ「AniJan」でともえだ君が着てたやつだろ!あったりまえじゃん。欠かさずチェックしてるよ。
いやいや、お前の方が似合ってるって!まじで!ともえだ君かと思ったもん。いやいや、ほんと俺なんてえびぞり君のモテヤマ系な雰囲気なんて出せてないって。ほんとほんと、もー!




じゃあこの後約束あるから帰るわ。デートとかじゃないって!ないない、あの娘はないわ。…知ってる?あの娘ってさ、ああ見えてすげー足臭いんだぜ!ぶはははは!言っちまったよ!あー、笑死ぬかと思った。じゃあ今度こそほんと行くから。うん、うん、じゃあねー。

1999年の冬


2000年まで残すところあと数日となり、街は2000年問題なんて些細な問題を抱えつつも、普段の年末以上に煌びやかに、華やかに彩られていた。


銀座はカップル達で溢れ、どのカップルも幸せそうに手を繋いて歩いている。
「世紀をまたぐ俺だからついでに君の性器もまたぐこととしようかな」なんて口説き文句がそこかしこから聞こえてきそうなクリスマス。


そんな光景を一組のカップルが喫茶店の二階から見下ろしていた。


マライアキャリーの「オーファイゼステンクリスマーウーーーユー」なんてクリスマステンションが上がる曲が流れる店内にいるカップル達は、外と同様に男は「どうやってどれだけスマートにセイキをまたぐか」ということだけを考え、女は「あの服かわいい、このデザートチョウカワイイ、それを食べてる今のあたし、どぅ?」なんてことしか考えてない。まあ、今と変わらないってことだ。
そんな欲望渦巻く喫茶店内にどうも異質な二人がいた。

ピンクの豚どもの群の中に二匹のどす黒い豚がいる感じ。

二人には会話も動きもない。男の吸うタバコの煙だけがゆらゆらとモクモクと。
女は口を真剣菊一文字のように鋭く閉ざし、男は惚けた顔をしている。
どれくらいの時間が流れただろうか。店内にいたカップル達はその一組を除いてみんな入れ替わっている。それでもなんの違和感もない。さっきいた奴らも今来た奴らもこれから来る奴らもセイキをまたぐこととおいしいゴハンを食べている自分ってどぅん?ってことしか考えていない。


「ねぇ、知ってる?友達から聞いたんだけど男のストーカーって質悪いらしいよ。ほら、何年か前にもあったじゃない。ドラマで。あのケイゾクの人がストーカー役のドラマ。だから今回みたいな殺人事件が起きたりするんだよね。怖いなぁ」


沈黙を破ったのは女だった。キレイな薔薇には棘がある。この女の言葉にも棘がある。


男は惚けた顔をし続けた方がこういうことを言い出すバカ女には効果覿面だと言い聞かせさらに惚けようとするがうまくいかない。男の唇が真剣マサムネの如くギラリと鋭い線を引いた。


男は考えている。なぜあんなことになってしまったのか。己の行動を思い返す。非は一体どっちにあったのか。男は思い返している。

Tamkin in exile【第三章】


己をEXILEと称する謎の男とエクセルシオールに入った。
名前を聞くと「さとう」とひどくぶっきらぼうに名乗った。どうも「さとう」という名前が気にいっていないような態度だったから、安心しろお前は誰から見ても「佐藤」だよ、と言おうかと思ったが、そんなくだらないことでこの逸材を逃すにはあまりに惜しいし、言わなくともこいつは間違いなく佐藤だ。


佐藤はビールを頼み、僕はアーモンドキャラメルラテを頼んだ。「お支払いはまかせてください」と言うと、「ったりめーだろ!このドチンが!」とほんとにかなりの大声で言われた。頭がおかしいのだろうか、こういった人と絡むのは初めてだからどう接したらいいのか分からない。そしてほんとにめんどくさい。そして意味が分からない。ドチンってなんだ?


佐藤は席に付くなりビールを一気飲みしていきなりグラスを開けた。
「うんまー!もう一杯!」と言われたからさすがにムカついて、金だけ渡した。やだな、周りの視線が痛い。
二杯目のビールも席に付くなりぐびぐび飲み出したから、あまりにムカついてぶん殴ろうと思ったら、「うぷ…トイレ…」と言い出した。ほんとめんどくせー。

10分くらいしてトイレから戻ってくると、「で、話って、なんな、わけ?」とようやく話が前に進み出した。
かくかくしかじか説明すると、「ギャランティーは?」と想像通りの発言をしてきた。ほんとにつまらない人間だ。EXILEがどんどん嫌いになっていく。EXILE好きな奴ってこんなんばっかりなのか?



以下はそのときの佐藤とぼくとのやりとり。ギャラについてその後もうだうだ言っていたが、もうめんどくさくなったから省きます。
佐藤との会話はiphoneに録音したものをおこしてます。このことは佐藤からも了承は得ておりますのでご安心ください。
なお、佐藤の話は相当めんどくさいので、かなり補正してあります。このことは佐藤から了承は得ていないけど、まあいいです。めんどくさいし。



田村「佐藤さんは先程、俺がEXILEだということを言われていましたが、あれは一体どういう意味だったんでしょうか?」
佐藤「そんなこと言ってねえよ。なんで俺がEXILEなんだよ?」
田村「あれ?さっきそういわれてなかっでしたっけ?えっとそもそも的に、佐藤さんはEXILEが好きなんですか?」
佐藤「まあ、好きか嫌いかどっちか選べってんなら好きかな」
田村「メンバーの中で誰が一番好きですか?」
佐藤「まあHIROかな」
田村「あの踊ってる人ですね?」
佐藤「おい!踊ってる人とか言うんじゃねーよ!パフォーマーって言えよてめえ」
田村「それは失礼しました。HIROのことはやはりZOOの頃から好きだったんですか?」
佐藤「ズーってなんだよ?鳥かよ?(佐藤暫し笑いが止まらず)あ、ああ、ZOOね。ああん、まああの頃はそんなに好きとかはなかったかな。よく聞いてはいたけどね。ほらなんだっけあの歌、一番売れてた歌」
田村「ああ、「フライデーチャイナタウン」ですか?いい歌でしたもんね、あれ」
佐藤「そうそう!あれ良かったよな。当時からかなりかっけえなって思ったからなー、あれは」
田村「そうですか。EXILEはどこが好きなんですか?歌ですか?生き様ですか?」
佐藤「俺はべつにEXILEのことなんて好きじゃないぜ」
田村「あれ?さっきどちらかと言えば好きって言ってましたよ」
佐藤「ああそう?EXILEに好きも嫌いもないぜ。だって俺がEXILEだし」
田村「……どういうことですか?」
佐藤「どうもこうもねーよ。俺が15人目のEXILEだってことだよ」
田村「でもこないだ発表されたのは14人ですよね?」
佐藤「ああ、あれな。まあ正式には決まってねーからな」
田村「え?14人ってあれ、正式な決定じゃないんですか?」
佐藤「正式に決まってんじゃん」
田村「ええと………どういうことですか?」
佐藤「話のわかんねー奴だな!おまえチンポか!?」
田村「ぼくはチンポじゃないですよ」
佐藤「誰がチンポなんつったよ?ツンポっつたんだよ!」
田村「ツンポ?ああ、聾ですか?」
佐藤「あれ、それそれ」
田村「で、どういうことですか?」
佐藤「だから俺が15人目のEXILEなんだよ!それ以外に言い様がねーよ!」
田村「それは正式にエイベックスだかリズムゾーンだかよくわかんないけど、そういうところからオファーが来たんですか?」
佐藤「まだ来てねえよ」
田村「佐藤さんは一体なにをもって15人目だとおっしゃっているんですか?」
佐藤「だって日本で男に生まれてこんだけ歌って踊れたらEXILEになる以外に道はないだろ」
田村「……もし女に生まれてたらどうしたんですか?」
佐藤「そりゃおまえ、ボーディアンソー!(SPEEDみたいに踊りながら)モー娘。だろうよ」
田村「そうすか。ところでEXILEの歌の中で何が一番好きなんですか?」
佐藤「あー、やっぱTi amoかな。俺のTi amoまじで上手いから、ちょっと今からカラオケ行こうぜ。なんか盛り上がってきたな!な!」


次回予告、一人で盛り上がる佐藤。舞台は今度こそ夜のカラオケへ移るのか?
お楽しみに!

Tamkin in exile【第二章】

池袋の空には雲一つなかった。こんな天気のいい日に一体なにをしているんだと悲しくもなるが、しかたない。いい加減EXILE問題にケリをつけなくてはならない。飽きてきたことだし。


池袋のHMVサンシャイン60通りにある。サンシャイン60通りには見込んだ通り、EXILEっぽい連中が大量にいる。要は決して仲良くなりたくない人達。これなら不愉快で有意義な取材ができそうだ。


このHMVはどうやら8月30日で閉店となるらしい。表参道のHMVが閉店となったときは残念でならなかったが、ここ池袋のHMVが閉店となるのは申し訳ないがある意味ちょうどいい。
それは閉店となるのであれば、池袋にいる悪そうなやつがEXILE聞かずに育つわけがないから、閉店と聞いた悪そうなやつがこぞってEXILEとの思い出を胸に抱き集まって来るだろう。

EXILEにろくな思い出なんてなにもないのにどうして俺等はまたここに帰ってきちまったんだろうな…」
「そうか?俺は今でもたまにだけどEXILE聞いてるぜ。俺、たまに思うんだよ。EXILEってのは俺等の夢だったんじゃないのかって。だってあの時だって…」

なんていう常人には到底理解不能な会話をしながら奴等は来る!と信じてEXILEのアルバムの前で張ること一時間、誰も来ない。


そんな馬鹿な話があるか?EXILEって紅白にも出場するようなトップグループだろ。それに歌って躍る人達なのに、月刊EXILEだとか劇団だとかよくわかんないことやってんだろ。そんな人達のCDが売れないわけないじゃあ、あるまいか?


だが、現実問題として実際に誰も手にも取らない。困ったもんだ。



待つこと一時間半、ここにきてようやくCDを手にとる人が現れる。年の頃30代前半くらいのOLが手に取った。
「すいません。ちょっとだけよろしいで…」
CDを戻して早足で逃げていった。そううまくはいかないか。


その後もたまにCDを手にとる人に声をかけ続けたが、無視されるか、脅されるかばかりされてばかりでいい加減滅入ってきた。  本当にファンがいるのかしら。



すると現れた。逸材が。テンガロンハットを被り、穴だらけのジーンズに先っぽがこむら返りした靴。ちょっとみっともないレベルに到達しているちょいデブ、そしてなによりも黒いTシャツの胸元には金色で「PERFECT YEAR 2008」とプリントされている。これは間違いなく「EXILE PERFECT YEAR 2008」のことだろう。Wikipediaで予習しておいてよかった。危うくフラグを見逃すところだった。



手元の時計を見るともう19時過ぎ。これがラストチャンスだろう。EXILE好きなやつはこれからの時間はウエストゲートパークでダンスか、居酒屋で「やっぱりHIROの真意がお前にはわかってないよ」なんて説教をするか、セックスしかしないだろうからこれからの時間での来店は見込めない。明日以降はこっちのモチベーションもダダ下がりだろうから、企画倒れで終わってしまう。
もっとも苦手とするファッションに身を包んでいるから話しかけるのに躊躇したが、ここまで時間を無駄にして、ここですごすご逸材を見逃すわけにはいかない。


EXILEは好きですか?」
「一つ言っとくけどな、EXILEが俺なんだから覚えとけクソジャップ!ぱっぱー!」
お前の方がクソジャップだろうがと思ったし、言葉がよく理解できなかったが、初めてまともに話を聞けそうだったから、とりあえず喫茶店へぼくらは向かったのでした。


次回予告、動き出した男達。そして舞台は夜のカラオケへ!
お楽しみに!

Tamkin in exile【第一章】


EXILEが嫌いだ。
とは言っても、ぼくはEXILEのなにが嫌いなのか自分でもよく分からない。
単純にEXILEの歌う歌なのか、EXILEを聴いている人が嫌いなのか、あの人数なのか、EXILEという生き方に影響を受けて服装とか話し方とか歌い方がEXILE化している人なのか、嫌いになり得る要因はたくさんあるが、どれも決定打とはならない。
そもそもぼくはEXILEの歌をまともに聴いたことがないし、EXILEがテレビに出ているとすぐにチャンネルを変えてしまうから、あの人達がどんなんなのかもよく知らない。知っている事と言えば人数が増えた事くらいしかない。

もしかしたらただの食わず嫌いなのかもしれない。歌を聴いてみたらぼくもEXILEが好きになれるかもしれない。
嫌いなものが好きになるということほど幸せなことはない。今までならテレビに出ていると舌打ちをしてチャンネルを変えていたのが、出ているだけでやったぜ!ってなれるかもしれない。頭も丸めて模様を入れるようになるかもしれない。

以前ならCD買うのもあほらしいし、パソコンを立ち上げてYOUTUBEで観るのもたるいわ、となって話はここで完結していたが、今はこのiphoneがある!さっそくYOUTUBEでPVを見てみた。


Ti Amo

なんかこれまたぼくが毛嫌いしている韓流ドラマみたいなのが始まったから高速で手が動きストップ。
だがこれではまだなにも聴いていない。もう一曲だけ聴いてみようと思い検索。



銀河鉄道999

なんかハリーポッターみたいのが始まったが我慢我慢。バックコーラスに優しいウィスパーボイスで「ジャニートゥザスター‥」と聴こえてきて気味が悪いが我慢我慢我慢。そしたら小さい男の子と背の高い女が出てきた。我慢我慢我慢我慢‥‥はい、無理。ここでギブアップ。あんな女がメーテルな訳がない、メーテルなめんなよ!



だめだ、歌を聴くこともままならない。
今まで知らなかったものを知ってしまい、それがまたとことんむかつくから、このままではなんとなく嫌いだったものが、明確な理由を持った嫌いになってしまう。
幸せが遠く離れていく。そして聞こえてくるのは不幸の足音。これはまずい。変なことしなきゃよかった。


こうなったら仕方ない。最終手段。
EXILEを好きな人からEXILEが好きになるような素敵なエピソードを聞き出して、その素敵エピソードをさも自分が体験したエピソードのように会う人会う人に自慢をして、EXILE好きをアピールしていくうちに本当に好きになってしまったという自己暗示をかけるしかない。
そこまでする必要性に疑問を隠しきれないが、乗りかかった船だ。とことんやってやろう。


作戦名、本末転倒作戦スタート!



そうと決まれば善は急げとEXILE好きが集いそうな池袋のHMVへ行こう。
そしてEXILE好きな人に突撃取材をしよう。



次回、池袋HMVでの突撃取材模様をお届けします。
お楽しみに!

水筒までの距離


「草食系男子」とか「水筒系男子」とかそういうレッテルを貼らないと気が済まない人達がいるらしいから、水筒を買いたいのにこのチョモランマ級のプライドが買うことを許してくれない。
もしもハンズなりロフトとかの水筒売場で良さげな水筒を物色中に後ろで「見て見て、ほらあれ水筒男子w」なんて笑われでもしたら、このチョモランマ級の高さまで積み上げたプライドがごろんごろんと崩れ、冗談抜きで死ぬかもしれない。
とは言っても、そんな「〜系男子」を使ってる女子なんて都市伝説か小学生か中国人しかいないんだろうから、そんなに怯えることはないのだが、世の中には「まさか」ということがある。



人生には3つの坂があるといいます。
1、上り坂
2、下り坂
3、まさか
人間の一生ですから予定通りにはいきません。調子のいいときもあれば悪いときもあります。ですが、上がり続ける坂はないし、下がり続ける坂もありません。いつかは状況というものは変わるものです。上り坂と下り坂は当然に存在するものなのです。
一番気を付けなくてはならないのが「まさか」という坂です。
これは自分の慢心が生み出す坂です。それまでの経験からふと気を抜いたときにその坂は全貌を現します。
この坂の存在に気付いたときにはもう「まさか」を上るんだか下るんだか知りませんが、その坂にのまれています。そして後戻りすることは非常に困難です。できるだけ過信しすぎずに謙虚に生きていきましょう。

恩師の言葉です。



そう、まさかがある。
「Yeah!うちの金魚マジで人面魚!チェ、チェ、チェ、チェケラー!」とか言う奴だったら、「〜系男子」とか本気で使いかねない。

可能性が残されている限り、水筒売場を覗くこともできない。

「〜系男子」とか使う可愛くない系女子は死んだらいいと思うよ。まあいくらなんでもそれはあんまりだから、好きで好きでたまらない!って人に「死ねよ」って言われればいいと思うよ。

それならこっちもプライドもかなぐり捨てて水筒を買おう。

第2章【再生】第4話


フー!アフー!なんてビートを刻んでいたら、目の前の液晶にはリツコではなくシンジが。
んふー、なんて固唾を飲んだら「逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ」んふー。

この時点で投資額は19000円。さすがに擬似連は当たるだろ。この当たりが4連すれば、欲を出しすぎない限り負けはない。血が沸騰した。

発展先はアスカ。アフー!ア、ア、ア、ア、アフー!ただし3と4のダブル。4くさいな。
なんて思ってたらサクッと3で使途殲滅。

残酷な天使のテーゼにあわせてフーフー言っていたら隣りの女と目が合った。女はその瞳と唇を妖艶に光らせて俺のことを見ている。おまえは本当にセクシーだぜ。ンーッベイッベ!




頬を刺す串の痛みで我に帰った。コンビニの裏のゴミ置き場を漁り、唐揚げが一つだけ残った唐揚げ棒にむしゃぶりついたときに串ごといったもんだから、串が頬に刺さってしまった。

なぜ俺はこんなとこにいるのか。さっきまで確変を引いてフーフーしてたはずなのに、なぜコンビニでゴミ漁りに精を出しているのか。

断片的な記憶。「打つかい?」と言う俺。断片的な記憶。女の座っていた台に1000円札を突っ込んでいる俺。
この記憶の俺は本当に俺なのか。冗談だろ、なんで確変の台を譲って、金を突っ込んで他の台をやってるんだ?

失われた部分が多すぎる。

「記憶を返せ!」

空に叫んだ。
頭に何かが引っかかっている。もう少しで何かが出てきそうだ。

「記憶だけは返してもらう!」

もう少しだ。手を伸ばせば届く距離。そこにこの顛末の答となるなにかがある。

「来い!」

ポロリと出てきたのは土下座している俺。誰に?女だ。隣に座っていた女だ。
土下座?この俺が土下座だと?
人に頭を下げられるのであれば、こんな生活はしていない。

この記憶はおかしい。俺じゃない。だが記憶の中に映る男は確かに俺だ。

もしもこの記憶が改竄された記憶であるとしたら?誰に?あの女に!

「ありえないわ!」

確かにありえない。だがそれ以外にありえない。

空には月。地には俺。俺はあの女を取り合えず探してみようと思う。
「また一人か…」
一人ごちても月はただ白く、月以外にそこにあるのは、黒。