酒気帯び車椅子に注意!

 中島らもさんの「酒気帯び車椅子」という本をジャケ買いしました。

酒気帯び車椅子 (集英社文庫)

酒気帯び車椅子 (集英社文庫)

 一体どんな本なのか?タイトルだけではまったく想像がつかない。「そういえば、最寄り駅にいつもウヰスキーの小瓶を片手に持った車椅子のおじさんがいるが、ひょっとしてあいつの話か?」なんて期待したが、もちろん違った。
 やはり「今夜、すべてのバーで」という最高にイカすタイトルの小説を世に出している中島らもさん、読んでみてぶったまげた。

 内容としては、いろいろあってヤクザに家族だとか足だとかいろんなものをぶっ壊された男が、いろいろあって酒ばっかり飲んでアル中状態になり「だら、復讐すっぺ」と思い立つはいいものの、足がぶっ壊れてるから歩くことができない。こいつぁー困った、と泣いているときに友人から救いの手が。友人は車椅子を超絶的殺人兵器にしてやるからちょっと寄越せと。ええ、お願いしますと車椅子を預け、食べるものもないからドッグフードを食べ食べ待つこと一週間、友人が満面の笑みで持ってきたのは、人を殺すためだけに改造されたバイクのエンジン搭載の超絶殺人兵器車椅子。時速60キロ出るし、階段も登れるし、マシンガンあるし、日本刀付いてるし、ロケットランちゃ〜搭載されてるし。そんな殺人兵器車椅子に乗り込みやくざに復讐するのをコミカルタッチに描いたぶっ飛びすぎている話。
 だが、ぶったまげたのはぶっ飛びすぎているその内容にではない。
 

 これほどまで感情移入のできない本は初めてだ。


 そこにぶったまげた。なぜか。わからん。わからんけど全然感情移入できない。
 家族が無惨に殺されてしまう痛々しい場面があるんだが、全然痛くない。「友達が昔米国にホームステイしていたときに隣に済んでいた家の娘が幼いときに好きだった男の子のお父さんが拳銃で撃たれて亡くなった」というくらい遠いところで起きているという感じ。読みながら置いてかないでくれと何度懇願したかわからない。
 
 そう感じてしまうのは自分だけなのだろうか。あの潤沢な感情はどこへいってしまったのか。もしかしたらあのときうんこと一緒に便所で流されてしまったのかと不安になり、前に読んだときにほろり涙した「クローズドノート」を再びオープンドノートしてみる。
 また泣きそうになった。大丈夫、あのとき流したのはうんこだけだ。

 とするとやはりこの本に問題があるんだろう。ここまで感情移入できない本ってのもちょっとすごいと思うから、本を読むと感情移入しすぎちゃ〜って困っちゃ〜うって人は読んでみたらええんちゃ〜う。